悪い意味で使われることが多い、「貪欲」という言葉。ただしスポーツの世界などでは、時として「貪欲に取り組み続ける」ことが重要であるといわれます。
試合に勝ちたい、うまくなりたいといった根強い欲望がまずあって、その次に「欲望を達成させるために」何をするべきかを「意識」して物事にあたる。これが大切です。

ただ何も考えずに練習するのではなく、「試合（本番）を意識して練習を続ける」ことの重要性もよく耳にします。単なる精神論ではありません。たとえばウェイトトレーニングにおいても、筋肉の動きを「意識」して続けたほうが効果的といわれています。

また、「意識する」ことが大切であるのは、スポーツの場面に限ったことではありません。「ただなんとなく」行なうことが無意味であることを説いているのは、次の言葉。

これはイタリア・ルネッサンスの第一人者、レオナルド・ダ・ヴィンチの言葉です。『モナ・リザ』『最後の晩餐』など、画家としての顔がまず思い浮かびますが、多方面に発揮された才能をみれば「自然観察のプロ」という肩書きがふさわしいような気がします。じっくりと物を観察し、解剖学や生物学の領域に踏み込み、そうした知識が写実的な絵画を生んだともいえるでしょう。
絵画、彫刻はもとより、築城、土木、造兵術、医学、天文学、流体力学、幾何学、音楽、文学にまで研究対象はおよび、彼の遺した6000ページのノートには、羽ばたき飛行機や潜水艇、回転翼ヘリコプター、重荷をリフトアップさせるジャッキなど、当時の技術では到底実現しえなかった数々のアイデアが記されています。

何事にもまず、欲望ありき。「こうしたい、なりたい」ということを意識した上で物事に取り組まないと無意味だということです。また、こんな言葉もあります。

これは藤猛、海老原博幸、柴田国明、ガッツ石松、友利正、井岡弘樹といった世界チャンプを6人も輩出したボクシングの名トレーナー、エディ・タウンゼントの言葉です。指導する側、つまりコーチングにおいても、教えられる側の「意識」にもとづいた指導をしないとダメ、ということです。そのためエディは、選手とのコミュニケーションを大事にしました。よく「トレーナーであるとともにお父さんで、友達でもあるんだ」と口にしていたそうです。その「密」な関係があって初めて、選手の「欲」を理解し、時には欲そのものを引き出すことに成功したのだと思います。